MG Tシリーズは、1936年から55年まで、つまり第二次大戦前夜から戦後十年という二十年近くものあいだ造られた英国製のスポーツカーです。戦前生まれらしくクラシカルなロードスタースタイルをもち、チューニングしやすいエンジンと相まって、現代に至るまで長きに渡り多くのファンに愛され続けています。
シリーズはTAに始まり、ごく少数のみが造られたTBを経て、戦後TCへと発展。ここまではほぼ同じモデルと言っても過言ではありません。
しかし、1950年にデビューしたTDともなるとエクステリアの雰囲気こそ以前のTシリーズを踏襲してはいたものの、中身はフルモデルチェンジというべき変更を受けていました。
特に新たなシャシーをMG Yタイプからもらいうけたため、トレッドが広がり、一見してワイドなスタイルとなっています。TB時代からお馴染みのXPEGタイプSUツインキャブ付き直4 1250ccの改良版エンジンを引き続き搭載しましたが、新たなトランスミッションやシャシーを得て、スポーツカーとしてのパフォーマンスは大いに向上しました。このあたり、前作TCがアメリカ市場で大いに人気を博したことを受けての改良だった、とも言えるでしょう。
戦前の風味を色こく残しているという点で、本格的なヴィンテージカーライフへのとば口としてもオススメできるモデルです。
TシリーズはTDの後、53年にはTFへと“ビッグマイナーチェンジ”。55年になると、モダンで全く新しいエクステリアデザインをまとったMG Aへと世代交代を果たすことになります。
西川淳の、この個体ここに注目! |
ファーストオーナーがオランダ貴族(当時の登録証も付属します)という大変由緒正しき右ハンドル仕様1951年式TDの登場です。
ファーストオーナーからセカンドオーナー(日本人)、そして現在のサードオーナーにいたるまで、整備記録簿やメンテナンス記録がほとんど全て揃っているという非常に稀有な個体です。それらをひとつひとつチェックすることで、この個体の歴史を探索できるという“プラスα”の楽しみもあるでしょう。
自走でイベント会場まで行き、長丁場のクラシックカーラリーに出場しても不安のないようにという現オーナーの強いこだわりをもって、機関類の仕上げや実用的なモディファイが徹底的に行われました。
たとえばクラッチはベアリング方式に、点火系はフルトランジスター方式(オリジナルへ戻すことも可能)に、アースはプラスからマイナスへと変更されています。セルモーターや燃料ポンプ、キャブレター(SUツイン)も交換。ボディ後部には荷物積載用の荷台を取り付け、フォグランプやハザードランプ、オリジナルのレーシングスクリーンも新たに加えています。いずれもラリーを安全に戦うための実用的なモディファイといえるもので、これらのファクトからも現オーナーがこだわったという機関系の完成度を伺うことができることでしょう。その完成には日本の有名なファクトリーで三年という年月を要したそうです。それでいて、内外装のコンフィギュレーションはオリジナルを忠実に再現。TDのクラシックな雰囲気は全くもって損なわれていません。
オーナーの厚意で半時間ほど試乗してみましたが、非常に扱い易いクルマというのが筆者の第一印象でした。エンジンはゴキゲンにまわり、小さな車体が正に人車一体の加速をみせました。大きなステアリングホイールの操作フィールは想像していた以上に一体感のあるもので、自然な遅れとともに前輪が確かな手応えをもって切れてゆき、望みのラインをトレースしてくれます。
今となってはこんなにクラシックなスタイルのクルマではありますが、今乗ってもやっぱり、正真正銘のスポーツカーだったのです。
なお、本個体には、新品タイヤ4本を含む多数のパーツストックも付属しています。オリジナル工具も完備していました。
年式 | 1951年 |
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初年度 | 1986年10月 |
排気量 | 1,250cc |
走行距離 | 38,000km |
ミッション | 4MT |
ハンドル | 右 |
カラー | グリーン |
シャーシーNo | TD5928 |
エンジンNo | XPAG-TD-LHX6341 |
車検 | 2020年7月 |
出品地域 | 東京都 |