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ザ・パーフェクト

国産旧車ムーブメントのなか人気モデルを挙げろと言われて必ず出てくる名前がトヨタ2000GT、日産スカイラインGT-R(PGC10&KPGC10)、同KPGC110、マツダコスモスポーツ、そしてこの日産フェアレディZ432でしょう。筆者はこの五台のことを勝手に“旧車ビッグ5”と呼んでいます。

なかでもトヨタ2000GTとケンメリGT-R、フェアレディZ432はいずれも生産台数が500台以下(順におよそ330台、200台、420台)で、世界的にみてもスポーツカーミュージアムのマストアイテムというべき存在、つまり“旧車3ベスト”と言えるでしょう。否、今なお日本車史上の3ベストかもしれません。

それゆえ昨今その価値は非常に高まっており、いずれのモデルも30万〜60万ドル(程度と仕様による)が実際の取引相場となっています。価格だけでクルマの価値が決まるわけではありませんが、この三台が飛び抜けて高い相場を維持している背景には、それぞれのユニークな物語性と高い商品性(デザインやエンジニアリング)に加えて、“生産台数500台以下”という一級コレクターズアイテムの世界的な条件に合致しているからに相違ありません。

うち二台が日産車で、しかもS20エンジン搭載モデル。プリンスのレーシングエンジンをベースとしたS20エンジンはもうそれだけでコレクターズアイテムとなっています。エンジニアリングの妙はもとより、背景として抜きには語れない日産との合併やハコスカスカイラインの活躍などストーリー性も豊かな点が人気の理由でしょう。

そんな名機を(旧プリンス生まれのスカイラインではなく)日産の代表というべきスポーツカー・フェアレディにも積もうという上層部のプランが云々、という話もまた、ロングノーズ&ショートデッキフェアレディZの誕生には欠かせないサブストーリーです。S20エンジンの存在がそれまで4気筒のスポーツカーであったフェアレディの秘密裏に進められたZ化プランを結果的に後押ししたとも言われています。

とはいえ高度なメカニズムを持つ(=決して扱いやすいとは言えない)S20を量販モデルに積むわけにもいかず、丈夫で懐の深く扱いやすいL型6気筒エンジンがスタンダードモデルには搭載されることとなりました。北米仕様には力強い2.4L版(のちに2.6L、2.8Lへと発展)L24が積まれたのに対して、日本仕様は税制の観点(5ナンバー維持)からも2LのL20搭載にとどめられました。その代わり同じ2Lながら高性能を発揮するS20エンジンを最高峰グレードに搭載したというわけです(後に日本市場向けにも240Zが追加で投入されます。そのとき名車240ZGが誕生しました)。

その最高峰グレードこそがZ432でした。数字の意味はよく知られているように「4バルブ3キャブレター2カムシャフト」を意味します。つまりS20エンジンを積んでいると宣言する車名を与えたのです。

69年にフェアレディZが登場した際、スタンダードモデルが84万円であったのに対してZ432は182万円とその倍以上のプライスタッグを付けます。車両価格の半分がS20エンジン代だと言われる所以です。大卒の初任給が4万円程度という時代でしたから、現代の感覚でいうとスタンダードで500万円、Z432で1000万円前後というあたりでしょうか。

Z432のエンブレムを付けたフェアレディZは、モータースポーツでの活躍もあって一躍、クルマ好きの憧れになります。後の240ZGと同様、当時はスタンダードモデルを“それ風”に改造することも大いに流行しました。現代においてもその人気が衰えることはなく、フェアレディZ史を代表する一台として不動の地位を保ち続けているのです。

またモータースポーツ用のベース車両として特別な仕様のZ432Rもごく少数が生産されています。現存する台数は十数台と言われており、そのぶん価値は天井知らずで、現在では60万ドル以上で取り引きされているようです。

Z432はオイルショックが深刻化し排ガス規制も強化された73年に生産を終えるまで、わずかに419台が製造されたのみでした。


オーナーA氏と西川淳のQ&A!

西川(以下、西)いよいよAさんのS30コレクション、真打ちの登場です。このシルバーのZ432はマニアの間で非常に有名な個体なんですってね。

A氏(以下、A)そのようですね(笑)。車体番号が88ですから、おそらく1970年1月ごろの生産という非常に初期のPS30(Z432)に間違いありません。

西さきほど雑誌のコピーを見せてもらいました。当時のクルマ雑誌などにもよく出ていたようです。

調べてみたところ銀座の会社が最初のオーナーでした。

西銀座か。日産の本社がありました。ほとんど広報車のように複数のメディアに出ていたようです。S30マニアのAさんです、出会うべくして出会ったという感じですか?

実はそうでもなくて。アメリカでS30Zの魅力にハマって左ハンドルの240Zに乗っていたものですから、日本の雑誌などで240ZGやZ432だけ採り上げられることにほとんど敵意すら抱いていたんです。アメリカを見ずしてS30を語るなかれ、みたいな。

西敵ですか!(笑)マァ確かに日本専売モデルだけが名車のように扱われてきましたね。ほとんどが北米に輸出されたというのに。

日本専用がなんぼのもんじゃい!と思いつつも、ひょっとして食わず嫌いなのかもとある時思い始めたんです。そこで当時入っていたオーナーズクラブの大先輩が所有するZ432に乗せてもらえるよう思い切ってお願いしてみたんです。奇しくもシルバーのZ432でした。もうエンジンのリズミカルな音を聴いただけで全く別のクルマのように思えましたね。それにマグネシウムのホイールがまた格好よくて。

西確かにそれだけで別物感ありますよね。乗ってみてどうでしたか?

さらに凄かった。高回転型の気難しいエンジンを想像していましたがそれほどでもなくて、むしろ北米仕様の240Zより発進や低速時にクルマがよく前へ出てくれるというか…。アクセルを踏み込んでみれば、その吹けのいいエンジンフィールとサウンドに一発でノックアウトされたんです。

西ボクもさきほどAさんのZ432を運転しましたが、重いクラッチといい具合に固められたアシといい、やっぱりスパルタンな乗り味でやはり他のZとは別物だと思いました。

そうなんです。何もかもが柔らかく感じる北米の240Zとは正反対ですよね。三つのペダルのどれもが筋肉を要求してくるあの感覚とダイレクトな車体の動きや反応など、すべてがスポーツカーを運転している!という気にさせてくれるんです。

西特にAさんの個体はオリジナル主義でレストアされたというだけあって、おそらく新車時の感じをよく再現できているんだと思われます。手に入れた経緯を教えてください。

初めて試乗したZ432に衝撃を受けたあと、考えることは寝ても覚めてもZ432のことばかり。2007年くらいのことでまだ高騰する前でしたが、とはいうものの240Zとは比べ物にならないくらい高価なクルマでした。で、一計を案じました。いっそあのエンジンさえ手に入れば同じ感覚を味わえるんじゃないか、と青い240ZのエンジンをS20に換装することも考えたのです。ところがZ用のS20ってほとんど売り物がなかった。珍しくあってもGT-R用ばかり。オイルパンからストレーナー、エキマニ、エンジンマウントなどZ専用パーツが必要で、それすら調達は難しかった。そんなときS20エンジンの相談をしていたショップのオーナーに「だったら無理してでもホンモノを手に入れたほうがいい」とズバリ言われてしまいました。

西本物志向の強いAさんですから核心を突かれたわけですね。

ほどなく全てをバラして組み上げる直前のZ432があると、そのショップから連絡もらったんです。で、駆けつけてみればほとんど全てがオリジナル部品というしかも貴重な初期型Z432でした。この個体が他の人の手に渡ってどこかで人のクルマとして出会うなんて。そう想像するだけで心が張り裂けそうになりました。これを逃したら一生後悔することになる。必死でお金をかき集め、なんとか購入できました。

西その気持ち、よ〜く分かります。不思議と何とかなるものなんですよね。

行動力があったんですね。完成したあとは2014年のZCONにもこのZ432を持っていきました。この個体も高いレベルのレストアが認められてクラス優勝を戴きました。

西あらためてAさんのZ432について詳しく教えてください。

まずZ432の特徴からいきましょう。というのもエンジンだけが違うZのように思われている方も多いので。実はボディと内装デザイン以外はほとんど違うと言っても過言ではありません。特徴を挙げてみましょう。

・独立ブランチのステンレスエキマニ
・デュアルパイプマフラー(エキマニとの接点からエンドまでデュアルパイプ式)
・トランジスタ式点火システム
・軽量アルミ製ラジエター
・専用デザインのエアクリーナーBOX
・FS5C71A型5速トランスミッション(ギア比は他グレードと同一ながらS20の為に補強されたミッションケースを採用。またスピードメーターの取り出しにはより耐久性のある90度アダプターを採用)
・ギア比4.444、LSD内蔵のR192型デフ
・バネレートを高めた4輪コイルスプリング
・リアにもスタビライザーを装着
・リターンパイプのないガソリンタンク(送りパイプは通常に比べて径を拡大)
・電磁式燃料ポンプをエンジンルームではなくガソリンタンクの脇に設置(熱害を避け吐出力を上げた)
・マグネシウムホイール、専用ストレートナット
・ステアリングホイール上ホーンパッドのZが赤色
・10000rpmのタコメーター

西随分と違うものですね!

そうでしょう?そのうえこの88番は70年1月生産で、69年の超初期型に近い仕様が散見されます。

・すべて金属製のエンブレム
・エアアウトレット付きテールゲート
・穴無しのCピラーエンブレム
・センターコンソールにはチョークレバーとハンドスロットルレバー
・シートバック後方のプラスチック製工具カバー
・穴無しステアリングホイールスポーク
・日除けのない平らなマップライトカバー
・シンプルな3枚ルーバーのセンターエアベント
・シートベルトフックがシートバックに付く
・洒落た丸形クロームメッキのコートハンガー
・脚長の美しいデザインをもつ室内ミラーステー
・8トラックデュアルスピーカー
・スパークプラグレンチ(Z432のみ車載工具として積む)

西いやはや、これまたけっこう違うものですね〜。

そして、この個体には次の純正オプションも装備されていました。

・オイルクーラー(Z432-Rに標準)
・リアスポイラー(初期型にユニークな二本の縦リブ付き)
・とてもレアなフォグランプ
・フォグランプスイッチ
・FMパック(8トラデッキにテープ代わりに差し込んでFM受信するデバイス)
・ヘッドライトカバー(装着せずに保管。ネジの位置が初期型)

西今やこの手のコレクターズアイテムでは純正オプションのユニークさも評価されますからね。そしてZCONでもクラス優勝したという素晴らしいコンディションです。

外装のきれいさは言うに及びません。サイドステッカーは自家製のお遊びですが(笑)ダッシュボードなどは当時のままの非常にきれいな状態です。シートもとても状態の良いものが残っていましたがそれは大切に保存してあります。現在のシートは別にレストアしてもらったものです。これも偽物ではなく、当時のオリジナル生地を奇跡的に持っておられた東京の職人に丸ごとお願いし新品と同様に張りのある仕上げにしてもらいました。S30のシートは70年中期までの初期型とそれ以降のものでは背もたれの厚みが違います。初期型のほうがふっくらしたシェイプなのです。この違いに気付いている人はほとんどいませんね。

西S20エンジンの調子も素晴らしくよかった。

エンジンにも思い出があります。佐賀県伊万里市にS20の世界では有名なレーシングサービスワタナベが在りました。ずっと前から自分のZ432を診てもらいたいと思っていたのですが、念願叶って奈良から伊万里まで一気に走ったのは渡辺さんが亡くなる半年前のこと(2018年)でした。とても親切な方で、調整のツボなどをわかりやすく話してくれながらキャブ、点火タイミング、足回りなど診てもらいました。今でもビデオにしっかり残してありますよ。驚いたことに渡辺さんが触り始めてものの数秒でS20エンジンがあきらかに元気になったこと。クルマもきっとほっとしたのでしょうね、そこから細部を丁寧に調整していただきました。アイドルは1300回転と高めですが、渡辺さん曰く「これくらいがこのエンジンにはちょうどいい、整備書には950-1050とあるんだけど、街乗りしやすくなるし燃料がそもそも多めだからね」と。確かに、それ以前とは違って発進しやすくなり、夏の日の信号まちでも水温がそれほど心配にならなくなった。信号待ちでかぶるということもこの個体には無縁です。渡辺さんにもっとS20のことを教えていただきたかったのですが……。

西思い出の詰まったZ432ですね。他のコレクション(二台の北米仕様240Zと240ZG)も含め、全てオリジナルコンディションを極めた逸品揃いだと思います。歴史の一部だと言っても過言ではない。それにこれだけいいオリジナル度の高いコレクションながらAさんは飾らず存分に楽しんでこられた。そこが素晴らしいです。歴代オーナーが大切に使ってきた珠玉のS30Zたち。その思いと一緒に引き継いでくれる方が現れることを期待しています。

車両スペック

年式1970
初年度1970
排気量1,998cc
走行距離54,000km
ミッション5MT
ハンドル
カラーシルバー
シャーシーNoPS30-00088
エンジンNoS20-000884
車検202010
出品地域奈良県
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