古き良き時代を継承する 最後のリアルアメリカン

シボレー・コルベットと共にアメリカを代表するスポーツカーとして、誕生から途切れることなく生産され続けているのが、フォード・マスタングです。日本では両車種とも大排気量エンジンを搭載したマッチョでパワフルなクルマというイメージはありますが、本格的なスポーツカーとしての王道を歩んできたコルベットに対して、マスタングは時代背景やユーザーからの要望に応え、スタイリングやボディサイズ、排気量を含めて、常に変化しながら庶民のスポーツカーとして存在してきたという点に大きな違いがあります。

初代モデルは1960年代、当時フォードの副社長だったリー・アイアコッカ氏が開発の指揮を取り、若者向けのスポーツカーとして、1964年のニューヨーク万博で発表されました。マスタングとは北アメリカ大陸で野性化した馬(ギャロッピングホース)のことを指しますが、一説には第二次世界大戦で活躍した戦闘機であるP-51マスタングにイメージを重ねたとも言われています。当時のスポーツカーの定番と言えるロングノーズ&ショートデッキのスタイリング、2368ドルという低価格とフルオーダーチョイスシステムと呼ばれる幅広いオプション設定で自分好みに仕上げられると、若者だけでなく、老若男女から支持を集めることに成功し、初代マスタングは大ヒット作となりました。

今回、取り上げる6代目(一説には5代目)は、その初代をモチーフとした内外装を採用したことが話題となったモデルです。フォードの「リビングレジェンド戦略」と名付けられたヘリテイジ路線は他メーカーに影響を与え、「シボレー・カマロ」や「ダッジ・チャレンジャー」などライバルもこれに追従し、アメリカで一大ムーブメントを起こしました。ただし、初代は販売戦略上の重要な位置付けでしたが、6代目はフォードブランドを代表するアイコンとなり、その役割は大きく変わっています。

ボディはクーペとコンバーチブルの2種類が用意されました。プラットフォームやエンジン(初期は4ℓ・V6&4.6ℓ・V8 SOHC。2011年モデルから3.7ℓ・V6&5ℓ・V8DOHCに変更)、足回りなどすべてが刷新されましたが、サスペンションはフロント・ストラット、リア・3リンク(リジット)と1960年代から大きく変わらない古典的な型式を踏襲しています。これは、海外輸出を意識せず、ほぼ北米専用車として考えられていたため「あえて変える必要ない」と判断したからでしょう(6代目の海外輸出は年間わずか6000台程度でした)。今となっては洗練されていない足回りが生むアメリカンな鷹揚さこそが、このクルマの個性であり、他にはない走る楽しさを演出しているといえます。限界を超えそうになると最新の電子デバイス(トラクションコントロール&スタビリティ制御)が介入し、ドライバーをサポートしてくれることが、21世紀のクルマを感じさせる部分でしょうか。

ちなみに2009年と2012年の2度、内外装を含めたビッグマイナーチェンジが施されています。トータルパフォーマンスの熟成度や装備の充実という点で選べは最終モデルがベストとなるのですが、エクステリア&インテリアは明確に3タイプ存在するため、ビジュアル面まで含めると選択は実に悩ましいといえます。


山崎真一の、この個体ここに注目!

2016年、フォードが日本市場の撤退してから早4年が経過しました。この間にクライスラーがジープ以外のブランドの販売休止を発表。現在、日本法人としてはGMが孤軍奮闘をしていますが、日本におけるアメ車の求心力は急速に失われつつあるような気がします。

ただ、裏を返せば、現在アメ車を所有されている方の多くは、真の愛好家であると考えられ、販売店で有象無象の中から金脈を探すよりも、個人間で売買を行うほうが、良質なクルマに出会える可能性は高いと言えるのではないでしょうか? 今回ご紹介する2012年式のマスタングV6プレミアムはまさにそうした1台で、一目見ただけで大切に維持されてきたことを感じさせる抜群のコンディションでした。

「幼少期に母親がマスタング・ギア(3代目)に乗っていたことが原点でしょうか? 決定打となったのは2000年に公開された「60セカンズ」で、ニコラス・ケイジが駆るマスタング・エレノア(シェルビーGT500)に一目惚れしたことです。とはいえ、本物は年式が古く、扱いきれないと考えていたので、それに近い現代車はないものか、と探していたときに、出会ったのが先代のマスタングでした。2012年に新車で購入し、これまでコツコツと自分の好みにあれこれと手を加えてきました。」

"憧れのエレノアに近づけるために"。そんな思いもあってか、購入からカスタマイズに至るまで、かなり拘りをもって進めてこられた印象を受けました。ボディカラーはUSサイトで見つけて気になっていたというタングステングレー。国内仕様には設定されてなかったため、迷うことなく新車並行を選択したそうです。カスタマイズはリアコンビネーションランプの交換とペイントで仕上げた後期型ルックに、LED内蔵のスモークサイドマーカー、ヘッドランプ&フォグのLED化、左右のクォーターウィンドウのウィンドールーパー、電動格納ミラーへの交換など、ノーマルの雰囲気を損なわず、イメージを形にする呈で仕上げてきたそうです。アメ車マニアでもない限り、何が変わっているか分からないほど違和感なく、スマートに仕上げられている点はポイントが高いといえます。

7年間で刻まれた走行距離は約4.8万キロ。エンジンルーム内も美しく保たれており、309㎰/38.7㎏-mを発揮する3.7ℓV6DOHCエンジンはタペットノイズもなく、メカニカルサウンドは想像以上に抑えられています。V8エンジンと異なり、サウンドも軽快な印象です。

遠目で見ても美しく艶感のあるボディは新車時からの地下駐車場保管と定期的なコーティングの賜物です。フロントバンパーやミラーの飛び石などによる傷は目立つものはなく、ボディはリアバンパーに小さな傷が2か所ある程度でした。マイナスポイントとしてはフロントバンパー下のスプリッターに擦り傷、運転席側前輪以外の純正ホイールにガリ傷&メッキ部分に腐食が見られますが、いずれも軽微なもので、リペアにもさほど時間も費用も必要ないはずです。内装も運転席シートクッション外側に経年劣化によるシワが多少見られますが、全体的に手入れは行き届いており、次期オーナーも満足できると思います。

6代目マスタングの一番の魅力は、「新しいのにどこか懐かしい」というキャラクターかもしれません。リジットアクスルによる発進時にリアが沈み込む感覚や終始ゆるゆるとした乗り心地など、約6年前まで現役だったと思えない古典的なライドフィールなのですが、走らせると「これはこれで、いいか」という感覚になるから不思議です。性能追求型のスポーツカーとは真逆の存在ですが、非日常体験ができるという点については同じかもしれません。現行車はグローバルカーとして世界のライバルと対峙する洗練されたクルマになりましたが、独自の世界観など無くしたものもあると感じます。古き良きアメリカンスポーツを現代基準で気軽に体感できる6代目はクルマ趣味として、そして、アメ車の入門車として非常に魅力的であるといえるでしょう。

車両スペック

年式2012
初年度201210
排気量3,721cc
走行距離47,999km
ミッション6AT
ハンドル
カラータングスティングレー
シャーシーNo1ZVBP8AM5C5284749
エンジンNo
車検20224
出品地域兵庫県
  • レポートは売り主さまへのヒアリングと現車の視認を元に構成されており、必ずしも掲載内容の裏付けが取れている訳ではありません。CARZYは掲載内容の正確性・無謬性を何ら保証しません。
  • 車両の状態を専門的にチェックしているわけではありませんので、何らかの不具合や故障が含まれる場合があります。また取材から日にちが経過することによる状態変化もあり得ます。掲載情報はあくまでも参考情報であることをご理解いただき、購入に際してはご自身の車両状態チェックとご判断を優先ください。
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