クルマ好き究極のゴール

人生の目標とするクルマ。それは人によってそれぞれ。カーマニアに聞けばきっと十人十色。その答えはさまざまとなるでしょう。けれども、なかには多くのマニアから“あがりの一台”、“行き着くところ”だと奉られているモデルもあって、ロールスロイスのコーニッシュなどはその代表格と言っていい。マニア究極の一台というわけです。

コーニッシュ。もうその名前の響きが素晴らしい。いうまでもなくそれは南フランス、コートダジュールの湾岸沿いを走る風光明媚な道路に由来する名前で、もともとはベントレーの試作車(1939年製)に使われていたといいます。ベントレーは1931年から既にロールスロイス傘下となっていました。

60年代後半にロールス&ベントレーは4ドアサルーンのシルバーシャドウ&T1をベースとした2ドアクーペ&ドロップヘッドクーペ(オープン)をコーチビュルダーのマリナー・パークウォード社に造らせます。イタリアのカロッツェリアと同様、戦前のロールスロイスは、メーカーがナカミ(シャシーやパワートレーン)を造り、ボディパネルは外注先のコーチビュルダーが客の好みに沿って製作していたのです。マリナー・パークウォード(MPW)は当時英国に200以上も存在したコーチビュルダーの頂点ともいうべき技術を持つ会社でした。

71年になると、ロールスロイスおよびベントレーは2ドアクーペ&オープンのモデルに“コーニッシュ”という名前を使います。そして82年以降のコーニッシュはオープンモデルのみとなり、84年からはベントレー用に独自の名称“コンチネンタル”が与えられて、コーニッシュはロールスロイスのオープンモデルに与えられる専売モデル名となりました。

エンジンは伝統の6・3/4千cc(6747cc)のアルミ合金製V8OHVで、熟練の職人によるハンドビュルド品です。

コーニッシュのメカニズムは基本的に同じ年代のサルーンのものを使っていますが、ボディパネルはMPW謹製で、イメージこそシルバーシャドウなどに似るものの同じパーツは全くと言っていいほどありませんでした。つまり仕上げのまるで違う作品だったのです。

当時のコーニッシュシリーズには大きく分けて四種類存在します(ただし1stシリーズはさらに6、7種類へと細かく分けることが可能です)。キャブレター仕様がコーニッシュⅠ、インジェクション仕様となり内外装がモダンになった86年以降がコーニッシュⅡ、90年以降のエアバッグ付きがコーニッシュⅢ、92年以降はフル電動式オープンと4AT(それ以前は一部手動の電動幌で3AT)のコーニッシュⅣ、と外装のイメージを守ったままに進化を果たして、95年をもって惜しまれつつその生産を終えています。

生産台数でいうと、Ⅰが437台、Ⅱが1226台、Ⅲが452台、ⅣがコーニッシュSというターボ付きのスペシャルモデル25台を含めて244台。最終モデルのコーニッシュⅣやⅢは今やコレクターズアイテムになりつつあります。


西川淳の、この個体ここに注目!

88年式のUS仕様コーニッシュⅡです。どうやら前オーナーがほとんど乗らずに仕舞っておいたようで、走行距離はわずかに7000マイル。現オーナーも徹底的に整備したものの乗る機会がほとんどなかったそうです。取材の日も半年ぶりにエンジンを掛けたそうですが、一発で伝統のV8OHVは目を覚ましました。

非の打ち所がないとはこのことです。奇跡の個体と言っていいでしょう。そもそもクルマとしては非日常の際たる存在ですから、走行距離の少ない個体が多いというのもコーニッシュの特徴ですが、これほど少ないのもまた異例です。意地悪く細かいところまでチェックしましたが、そうやって細かく見れば見るほどに唸らざるをえませんでした。

インテリアも極上です。今となっては貴重なコノリーレザーも独特の香りを保っていて、室内の空気にある種の重さを感じるほど。二カ所のラッチを外して、そこからは電動で開閉します。とても分厚い木枠の入った幌を開けると、インテリアの華やかさがいっそう強調され、筆者などはそこに留まっているのが気恥ずかしくなるほどでした。いまや貴重なトップカバー(オープン時に使う)の状態も素晴らしい。

コーニッシュⅡということで生産台数が多く、ⅢやⅣに比べるとコレクターズアイテムの価値は少し下回ります。けれども逆に言うと、それだけ人気のあった証でもあり、乗って楽しむには最高のシリーズだとも言えます。実際、キャブレター仕様のⅠはマニアックに過ぎます(アイアンバンパーなら格好いいですけれど)し、ⅢやⅣになってくるとモダンな印象(エアバッグや全自動オープン)も強くなってちょっと薄アジなうえ、そもそも距離が少ない個体なんぞもったいなくて乗れそうにない。

その点、Ⅱはイイトコドリです。そしてこの内外装カラー。すばらしい。このクルマが似合うオトナを目指して買っておく、などと取材をしていて夢想だけが広がっていきました。

車両スペック

年式1987
初年度19877
排気量6,747cc
走行距離7,100km
ミッション3AT
ハンドル
カラーベージュ
シャーシーNoSCAZD02A8HCX20990
エンジンNo
車検20218
出品地域東京都
  • レポートは売り主さまへのヒアリングと現車の視認を元に構成されており、必ずしも掲載内容の裏付けが取れている訳ではありません。CARZYは掲載内容の正確性・無謬性を何ら保証しません。
  • 車両の状態を専門的にチェックしているわけではありませんので、何らかの不具合や故障が含まれる場合があります。また取材から日にちが経過することによる状態変化もあり得ます。掲載情報はあくまでも参考情報であることをご理解いただき、購入に際してはご自身の車両状態チェックとご判断を優先ください。
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