1952年から1966年まで存在した当時イギリス資本で最大の自動車メーカー「BMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)グループ」のスポーツカー部門におけるエントリーモデルとして1958年にラインアップに加わったのが「オースチン・ヒーレー・スプライト」です。
「誰もが手軽に楽しめる小型スポーツカー」を目指して企画されたこのモデルは、小型量産車のエンジンと足回りを流用してコストを抑えつつ、運動性を高めるために装備は必要最低限まで簡素化。オープンカーとしては世界初のセミモノコックボディを採用したことで、ボディ剛性の確保と軽量化を実現しています。つまり、スポーツカーとして成立させるために、少ないパワーでも性能を最大限引き出すことを目指して製作されたのです。
1971年まで生産されました。13年間の歴史の中で、今なおコレクタブルとして人気が高いのが1958年から1960年まで生産された同シリーズのファーストモデル、MkⅠです。
MkⅠの魅力は、トランクリッドすら設けられず、ドアハンドルも存在しないなど、走ることに不必要な部分は排除するという開発当初の思想が最も具現化されていることに加えて、やはり、日本では「カニ目」の愛称で親しまれた、ボンネットフードから突き出たヘッドライトがみせるユニークかつ愛くるしいフロントマスクでしょう。これ以降のモデルはMGBに似た当時のオーソドックスなスタイルとなったため、生産が終わるとにわかに人気が高まり、1995年にはオリジナルと寸分たがわないヒーリー公認の復刻版(FRPボディで、1275㏄エンジン搭載)まで登場しています。
メカニカルコンポーネンツに特筆すべきところはなく、948㏄の小さな直4OHVエンジンもわずか43psしかありませんが、車重は600㎏強という現代の軽自動車よりも軽量なこともあって、当時としてはクラス最高レベルの動力性能を誇っていました。愚直なまでに軽量であることを突き詰めたカニ目は「スポーツカーは機能やパワーで語れない」ことを再確認させてくれるクルマなのです。
ただ、シンプルがゆえに機関など各部を修理することは難しくはないのですが、細部にわたりコスト削減が進められたボディは腐食が進んでいるものが多く、購入時には注意しておきたいポイントといえるでしょう。
山崎真一の、この個体ここに注目! |
一目見て忘れることない稀有なスタイルは、誰もが傍に置いておきたいと思ってしまうほど愛くるしさに溢れています。
1992年に日本にやってきた個体で、現オーナーは国内外の旧車を数多く所有するコレクターから譲り受けたそうです。大きな屋根付き倉庫の中で、長期間動態保管されていたため、各部に傷みが出ていたので、購入後に幌を含めて内装はフルリフレッシュを施したそうです。
エンジンルーム内は購入したままの状態で時間を感じさせますが、機関の点検&整備は終えており、SUツインが装着されたエンジンについてもグズることなく一発始動、気になる異音などはありませんでした。足回りにはスパックスのダンパーが装着されていますが、全体に少し使い込まれた印象で、多少の機械音も出ていました。各部のグリスアップを含めて、少し気にかけておくほうがよいでしょう。
エクステリアはオールペンが施されているようですが、その作業は随分前のようで塗装はクリアの艶が失われており、ペイント表面の傷み、各部に過去の作業痕が目立っています。また、メッキ類の腐食、モール類のゴムパーツの劣化が各部に見られました。ただし、ボディに腐食穴などは見当たりませんし、60年以上が経過しているクルマなので、使い込まれてきた風合いのまま乗るのも悪くありませんが、機関が整備済みで、インテリアが一新されているだけに、予算を確保して手を掛けてあげたい、と思ってしまいます。エンジンルーム内も、パネル裏側はボディ同色ではなく黒なので、同じ赤でなく、自分好みにリペイントして楽しむのも、ありだと思います。
現行車種のようにノーメンテナンスとはいかず、ご機嫌を伺いながら運転をする必要はありますし、定期的なメンテナンスは必須です。ただ、構造が非常にシンプルなので、整備も難しくなく、ボディの腐食以外は修理にもあまり手が掛からないのが、オースチン・ヒーリー・スプライトの美点でもあります。
クルマというよりもペットという感覚で手をかけながら愛でるのが、このクルマとの正しい付き合い方かもしれません。
年式 | 1958年 |
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初年度 | 1992年11月 |
排気量 | 948cc |
走行距離 | 5,626km |
ミッション | 4MT |
ハンドル | 左 |
カラー | 赤 |
シャーシーNo | AN5L28926 |
エンジンNo | |
車検 | 車検2年付き |
出品地域 | 大阪府 |
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