車両価格
1,200万円
( 成約手数料込 1,255万円 )

不世出の傑作ミドシップスポーツ

ポルシェ博士がVWタイプ1を設計し、そのコンポーネンツがポルシェ356にも使われていました。共にブランド史のスタートから深く関係し合っていたわけで、現在もなおグループ企業として繁栄する両社、ポルシェとVW、は運命共同体であると言えるでしょう。

60年代後半、両社は奇しくも同じ課題を抱えていたのです。VWはブランドでも上位モデルに当たるカルマンギアクーペの後継モデルをどうするか。ポルシェは人気で高価な911シリーズの下級モデルで356譲りの4気筒エンジンを積んだ912後継車の開発が急務だったのです。

面白いことにこの時、両社は別個にミドシップエンジンモデルを検討していたと言われています。60年代半ば、マトラジェットという世界初のミドシップレイアウトロードカーが誕生すると、その後、ロータスやデ・トマソ、ディーノ(フェラーリ)が次々とミドシップのロードカーをデビューさせます。リアミドシップレイアウトはスポーツイメージを打ち出したいブランドにとって格好の素材だったのです。

前述したように当時もエンジニアリング面で深い関係にあったVWとポルシェは「ならばいっそ共同で開発し生産しよう」ということになりました。VWのリソースを使ってポルシェがデザイン、設計を担当し、双方で販売しようという手法です。

計画途中では、VWエンジンを積んだフラット4モデルをVWが、ポルシェエンジンを積んだフラット6モデルをポルシェが、それぞれの販売網で扱うことも検討されていました。事実、実際に後者はキーシリンダーがステアリングホイールの左側にあり、5穴のホイールを採用するなど、ポルシェの伝統に則って設計されていたのです。

ところが完成を前にVWとポルシェの間で開発と生産のコスト負担に関する“政治的”な問題が勃発。そのため結果的に調達コストが上がってしまい、予定していた価格では売れないことが判明すると、ポルシェは最大のマーケットである北米市場での併売によるイメージダウンを回避するべく、いずれのモデルもポルシェとして販売することを決定します。

こうして1969年、全く新しいデザインのミドシップスポーツカーが誕生しました。ポルシェ914です。MY1970から生産は始まりました。予定通り二種類のグレードを用意。ベーシックな914には80hpの1.7リッターVW製フラット4が、上位グレードの914/6には110hpの2リッターポルシェ製フラット6がそれぞれ積まれていました。いずれもポルシェ製5速マニュアルを装備。オプションでスポルトマチックも選ぶことができました。

ワイドトレッドにショートオーバーハング、ロングホイールベース、そしてFRP製ルーフパネルのタルガトップというユニークなスタイリングで、スポーツ性能を諦めることなく北米市場でも受け入れられるためにポルシェが考え抜いた、非常に巧妙なパッケージングコンセプトを有していたのです。

914は端的にいって優れたエンジニアリングの成果でもありました。決して安物のポルシェではなかったのです。ちなみにフラット6を積んだ914/6の価格は、前述したコストアップ要因もあって、ドイツ本国では同じベースエンジンを積んだ911Tとほとんど同じ価格になっていました。組み立ても914がカルマンだったのに対して、6気筒モデルの914/6はポルシェのツッフェンハウゼンにて行われていました。ちなみに914のトップスピード177km/hに対し914/6は201km/hと、性能差も歴然としています。

価格が予定より高くなったものの、914は狙い通り北米市場を中心に人気を博します。1972年にはポルシェ製フラット6エンジンを積んだモデルが消滅し、代わりに2リッターモデルの914 2.0(および914S)が登場。さらに914 1.7 は914 1.8へと進化します。そして76年にそのモデルライフを終えるまで11万台以上を生産しました。


西川淳の、この個体ここに注目!

ポルシェ914シリーズのなかでも、極めてレアな916を除けば最もコレクタブルなアイテムだと言えるのがこの914/6です。1970年から72年まで、わずかに3351台を生産したのみ。これは914全体のわずかに3%程度という出現率になる計算です。

販売車両はシャシーナンバー9140 430164を持つことから、極めて初期に生産された1970年モデルだと推定できます。72年までに販売された914には特徴的なクロームバンパーが装備されていました。

現オーナーが今から30年ほど前に単身アメリカLAへ渡って見つけ出し、個人輸入した個体です。持ち帰ったのちそのまま十年ほど楽しんでおられましたが、不幸なことに預けた修理工場で逆にエンジンまわりを壊されてしまいます。その修理工場でも治すことができず、オーナーは諦めてガレーヂに引き取り、不動車のまま15年以上、納屋物件と化していました。

その間オーナーはトミーカイラZZやMR2、ラディカルといったミドシップカーを大いに楽しんでこられましたが、三年前に914/6のフルレストレーションを決意されます。レストアを担当したのはクラシックカーやスーパーカー、レーシングカーの世界では有名な堺市のHRS(蓮池レーシングサービス)。部品代約200万円を含む1000万円以上と1.5年をかけてレストアされました。

オリジナルカラーは黄色。現オーナーがアメリカで購入した時点で既にブラックに塗り替えられており、HRSでレストア時にはボディのダメージもかなりあったようです。現在の色はオーナーの好みに合わせたブルーで、アルファロメオの純正色をサンプルに使用したとのこと。

問題はエンジンで、前出の修理工場が高圧洗浄をやりすぎたのか、内部まで水が回っており使い物になりませんでした。そこでHRSがヨーロッパで見つけてきた911T用のコンプリートエンジンへの載せ換えを決意。それゆえエンジンマッチング車両ではありません。その代わり、911T用のスペックを得ている可能性が高い。実際に少し試乗しましたが、1トン弱の車重に911T用エンジンは十分に力強く、太いエグゾーストノートを響かせていました(マフラーエンドもノンオリジナル)。

その他、インチアップされたタイヤ&ホイールや、ローダウンサス、小径のステアリングホイール、サイドピラーのボディ同色化などもオリジナルコンディションとは異なっています。

現オーナーの元に新たな高性能モデルがやってくることに伴って、やむなくの放出となりました。内外装全体のコンディションは上々で、レストア後わずか1.5年で5千キロですから機関も好調です。ポルシェ製フラット6を積んだ貴重な914を心置きなく楽しむまたとないチャンスと言えるでしょう。

車両スペック

年式1970
初年度19905
排気量1,991cc
走行距離
ミッション5MT
ハンドル
カラーブルー
シャーシーNo9140430164
エンジンNo
車検20233
出品地域大阪府
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