長く付き合いたい 跳ね馬入門モデル

70年代はじめにフィアットグループとなったフェラーリは、今となっては想像もできないことに、“一台でも多く売るためにはどうしたらいいのか?”、という実に自動車メーカーらしい悩みを抱えていました。その回答のひとつとして選ばれたのが、当時、人気を博し始めていたポルシェ911の戦略を採りいれることだったのです。

ポルシェ911といえば、+2キャビンの実用性あるスポーツカーです。そこでフェラーリは、ディーノ246GTの後継モデルとしてV8エンジンをミドに積む2+2=4シーターのスポーツカーを開発。ディーノ308GT4(のちにフェラーリ308GT4へ)として発売するに至ります。1973年のことでした。

ベルトーネのマルチェロ・ガンディーニによる端正なミドシップスタイルは、その極めて優れたパッケージングと運動性能にも関わらず、75年にデビューする美しいピニンファリーナデザインの2シーターミドシップ・308GTBシリーズの影にすっかり隠れた存在になってしまいます。

そこでフェラーリは1980年、今度はピニンファリーナデザインの2+2ミドシップモデル・モンディアル8を発表。4シーターモデルへ改めて、そして文字どおり世界を振り向かせることに成功しました。

ディーノ308GT4と同様に、モンディアル8もベースは308GTシリーズであり、そのロングホイールベース版というべきモデルでした。それゆえ、308シリーズがマイナーチェンジをするたびにモンディアルシリーズもグレードアップしていきます。

モデルの相関関係でいうと、モンディアル8が308GTBi同等であり、1982年には308GTB QVベースのモンディアルQV(クワトロヴァルヴォーレ)、そして1985年には328GTBベースのモンディアル3.2へと進化しました。また、北米市場からの要望に答えて、クーペフォルムを活かしたソフトトップをもつカブリオレがモンディアルQV時代の1983年に追加されています。

と、ここまでのモンディアルはあくまでも2シーターモデルとセットの存在だったのですが、1988年に驚くべき発表が行なわれました。なんとモンディアルに、排気量を3.2から3.4へと拡大したV8エンジンを、それまでの横置きから縦置きへと大変更して搭載するというものです。これは、328シリーズの後継となる348シリーズへの進化の布石でもありました。

こうして誕生したのが、最終モデルのモンディアルtであり、車名のtはエンジンが縦置きされた結果、横置きのままのトランスミッションとの関係がトランスバース(横向き、tの字を描く)となることから名付けられたものでした。

モンディアル8およびQVのバンパーは黒いプラスチックでしたが、3.2とtはボディ同色になり、モダンな印象が強まっています。モンディアルtは1993年まで生産されましたが、なんとカブリオレボディのほうが多く造られました。その3割以上が北米市場で販売されたと言われています。


西川淳の、この個体ここに注目!

走行わずかに25000キロ。新車1オーナーで大切にされてきた個体の登場です。モンディアルは跳ね馬入門機としての需要が大きいため、良質な個体が残りづらい傾向にありますが、この個体は内外装ともに素晴らしいコンディションを保っていました。それはもう、細かくリポートすることがかえって必要ないくらいに……。

とにかく、すべてがオリジナル状態であることはもちろんのこと、ロッソコルサのボディには25000キロなりの小キズやタッチアップ以外、これといって気になるところがまるでありません。一目みて、キレイだと感じた。取材時に割れが見つかったテールランプや、リアパワーウィンドウの不良といった分かりやすい問題点は販売時までには修理されるということなので、気にすることはありません。

エクステリア以上に驚いたのが、インテリアでした。黒レザーゆえ、どうしても小さなキズが散見されますが、クッションの張りや表皮の艶は申し分なく、これからさらに仕上げが入るというので、次のオーナーの手に渡るころには恐らく新車のような輝きを放っていることでしょう。それにしても、この香り、たまりません。80年代フェラーリに典型的な匂いがまだしっかりと漂っていました。

そうですね、オリジナルでないところが一つありました。それは、ボディサイズのSFステッカー。これは今も昔も定番のドレスアップアイテムですが、ステッカーなので剥がした方がよろしいかと。SFステッカーは高性能モデル以外、似合いませんし。

リトラクタブルライト&ミドシップモデルならではの、とても低いボディラインに大きなキャビン、4シーターのフルオープンミドシップ、という不世出の跳ね馬です。このパッケージ&レイアウト、仕様(オープン)はモンディアルが最初で最後。入門モデルといってしまうにはあまりに惜しい。フェラーリ好きこそ長く付き合って滋味溢れ出すモデル、と言えるのではないでしょうか。最新モデルを追い続けることに疲れた跳ね馬乗りにこそ、一度乗ってもらいたいフェラーリです。

車両スペック

年式1990
初年度199012
排気量3,405cc
走行距離25,000km
ミッション5MT
ハンドル
カラー
シャーシーNoZFFFC33JAP0087150
エンジンNo
車検
出品地域兵庫県
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