車両価格
550万円
( 成約手数料込 580.25万円 )

イタリアンクラシック 入門に期待の一台

“ディーノ・フィアット”誕生の物語はマニア好みの話のひとつと言っていいでしょう。

F2レースのレギュレーション変更に伴って、ディーノV6エンジンを12ヶ月間に最低500機造る必要に迫られたフェラーリ(当時の彼らにはまだそれほどの生産能力がなかったのです)が、ブランドイメージを上げるためにフラッグシップカーの開発を模索していた大会社フィアットとコラボレーションすることで、その目的をにわかに達成しようとした。それがこの有名な物語の発端でした。

物語の主役となった人物は、もちろんエンツォ・フェラーリと、かのジョバンニ・アニエッリ(フィアット創業一族)。彼らが合意に達したのは1965年3月のことで、レギュレーション変更は67年シーズンからとなっていましたから、残された時間はほとんどありませんでした。そこで急ぎ開発されたのがフィアット・ディーノ・スパイダーで、66年にデビュー。そしてクーペのほうはというと、翌67年に遅れて登場することになりました。

ピニンファリーナがデザインし、当初は生産まで担っていたスパイダーに対して、2+2クーペはホイールベースが27センチも長いベルトーネによるクーペデザインをまとっていました。オリジナルスケッチは65年までベルトーネに在籍したジョルジェット・ジウジアーロによるものだと言われています。スパイダーに比べてスポーツカー色が薄まっていた反面、豪華なグランツーリズモというキャラクターが付加されていました。

もちろん、両車の心臓部にはディーノ206GTと同じオールアルミ製2リッターV6エンジンが当初は収まっていました。生産遅延と品質劣化を嫌ったフィアットがトリノで組み立てたエンジンです。

ディーノ物語には続編があります。初期の目的=ホモロゲ獲得を達成したフィアットは、信頼性とパフォーマンスの向上を狙って69年にマイナーチェンジを実施。ディーノ246GTと同じ鋳鉄ブロックの2.4リッターV6とし、独立懸架化など様々な改良を施したわけですが、こんどはそのV6エンジンがマラネロ製となったことで、車体そのものもマラネッロのファクトリーで組み立てられることになったのです。

同年、フェラーリの市販車部門は正式にフィアット傘下となります。言ってみれば“ディーノ・フィアット”は、フェラーリの苦境を救うべくエンツォとジョバンニを近づけ、その後現代へと至る繁栄に導く大きなキッカケになったと言えそうです。


西川淳の、この個体ここに注目!

取材車両は1970年式フィアット・ディーノ・クーペです。クリームがかったホワイトにベージュのクロスインテリアというコーディネーションが、上品なクーペスタイルにとても似合っています。

今となっては小ぶりで端正なスタイリングで、クリーンなラインがいかにもジウジアーロらしい。抑揚のついた前後のフェンダーラインがとても優しく、にわかに気品さえ漂っています。やや上目遣いに見える丸4灯ヘッドライトのマスクもまた、当時のジウジアーロデザインの痕跡というべきでしょう。

ウィンドウを大きくデザインし、キャビンに余裕をもたせたのも特徴のひとつです。乗り込んでみれば視界はすこぶる良く、クーペにしてはとても開放的な空間が広がっていました。

クロスのシートに身を委ねれば、大衆ブランドの、しかも40年以上も前のグランツーリズモとは思えないほど居心地の良い空間が広がっています。個人的に特に気に入ったのが、メーター類。ウッドパネルの両脇にタコとスピードの大きなメーターを配置し、中央に5つの補計類を配置。実に60年代らしく、ドライバーの視認性よりもデザインが優先されたかのよう。

ドライバーに向かって突き出たシフトレバーは、左手前が一速というフェラーリパターン。黒い球形ノブに白文字で段数を彫るのもまたフェラーリ流。ひょっとすると同じものじゃないかでしょうか。

ライドフィールは完全に60年代のイタリアンベルリネッタ。たとえば、ランボルギーニ400GTやフェラーリ365GTCあたりとも、それはよく似ているのです。乗り心地は全般的に良好で、アクセルワークひとつでノーズがきれいに動く。現代車ではほとんど味わいがたい、クラシックFRクーペの乗り味。乗れば乗るほどに身体がクルマに馴染んでいくというプロセスが、たまらなく面白いというものです。

呼吸するエンジンとメカニカルなサウンドは、60年代クラシックに共通する楽しみですが、四千回転を超えたあたりからのディーノ・フィアットのそれは、また格別。パワー感もひょっとすると本家本元のディーノよりもあったかも?

60〜70年代のフェラーリはいずれも高騰しており、本家ディーノも夢のまた夢、となれば……。ディーノ・フェラーリと同じエンジンを積み、味わい深いドライビングプレジャーを提供してくれるディーノ・フィアットは、もっと評価されていいモデルだと思います。実際、スパイダーのほうはすでに高騰してしまいました。

今ならまだディーノ246GTの10分の1で手に入るフィアットのディーノクーペ。フルレストレーションを施したような完璧な状態ではありませんでしたが、それゆえ、これから楽しみつつ(ほんの少しは苦しみつつ)長く付き合うことのできる個体だということもできるでしょう。

車両スペック

年式1970
初年度19927
排気量2,410cc
走行距離92,000km
ミッション5MT
ハンドル
カラー
シャーシーNo135BC 0004136
エンジンNo
車検
出品地域愛知県
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