小さなミウラ

X1とは来る1970年代に向けたフィアット初のFF車開発プロジェクトコードで、事実、X1-1がその後のベースとなる69年発表のフィアット128でした。

60年代までのフィアットは、ヌォーバ・チンクエチェントをはじめコンパクトカーはRRで、中型車以上はFRというラインナップ構成でしたが、より安いコストで効率的な大衆モデルを造るべく、それまでの多くのフィアット車を手がけてきたダンテ・ジアコーサが積年の夢であったFF(前輪駆動車)の開発にようやく取り組んだのでした。アレックス・イシゴニスによるミニの開発がジアコーサを刺激したことはまず間違いなく、ジアコーサ式前輪駆動システムはイシゴニス式の欠点を克服し、その後多くのFFモデルに活用されるようになったのです。

60年代にアメリカで大ヒットした850スパイダーもRRがベースでした。そこでフィアット経営陣はFFの128をベースとした小型スポーツカーの企画を提案するよう有力カロッツェリアで850スパイダーを生み出したベルトーネに依頼します。そこでベルトーネは小型ミドシップのコンセプトカー・ランナバウトの思想を生かしたタルガトップルーフのスポーツカーを提案。FFやFRの対案を退けて見事に採用されました。ここに、量産小型ミドシップカーの原型となるX1計画9つめのプロジェクトX1-9が登場することになったのです。

デビューは72年。まずは1300cc仕様が登場すると、75年にはアメリカの法規制に適合した5マイルバンパー仕様がデビュー。78年には1500ccへと排気量を拡大します。その後、1982年までフィアットブランドで販売されていましたが、その後は開発と生産を担当したベルトーネの名前で1989年まで造り続けられたのでした。

量産車のエンジンを積むとはいえ、車重1トンを切るミドシップスポーツカーであり、かのジャンパオロ・ダラーラも開発に関わったというだけあって、量産ミドシップカーの魁は多くの人を今なお魅了するスポーツカーとなったのです。


西川淳の、この個体ここに注目!

当時の正規輸入元であった東邦モータースが輸入した、おそらくはフェイズ2の1300シリーズ、最後期生産の個体だと思われます。

もう二度と出ないであろう、奇跡的なフルオリジナル個体。細かなキズやはがれなど経年劣化というべき箇所は多々ありますが、全体的に見て内外装の程度も良好で、佇まいに不安がありません。クルマの輪郭が崩れていないというか、しゃきっとしているんですね。

それに、ライトブルーのエクステリアとブラウンインテリアの組み合わせなどは、オシャレのひとこと。X1-9のキャラクターから言って、改造されず、また派手な色にリペイントもされずに今まで残っていたことも、奇跡でしょう。

なかでも、黒いハシゴ型のデカールが残っているところなどは涙モノです。左右にはヌッチオ・ベルトーネのサインステッカーも残っており、なんとこれには連番が振られていたのです。つまり、この個体は77年にF1チャンプとなったニキ・ラウダ用の0001番から続く、2289番目の個体ということを意味しています。

日本仕様は排ガス規制のため、さほどパワーのあるエンジンを供給されていません。実際、乗ってみればフルスロットルでもまるで怖くない。速いというよりも、はっきりと遅い!とはいえ、小気味のいいハンドリングが印象的で、フルスロットルのまま駆けぬける歓びは、パワー競争のクルマでは絶対に味わえない、根源的な操る歓びを体現していると思います。

速いクルマが欲しいのであれば、最新モデルを買えばいいだけのこと。古いけれども設計の良いクルマには、五感で動きを察知し、頭と心と身体を使って動かし、次第にマシンと一体になっていくという、ドライビングの真骨頂があると言えるでしょう。

車両スペック

年式1978
初年度19796
排気量1,290cc
走行距離18,000km
ミッション4MT
ハンドル
カラー水色
シャーシーNo128AS0096371
エンジンNo128AS0316
車検201912
出品地域京都府
  • レポートは売り主さまへのヒアリングと現車の視認を元に構成されており、必ずしも掲載内容の裏付けが取れている訳ではありません。CARZYは掲載内容の正確性・無謬性を何ら保証しません。
  • 車両の状態を専門的にチェックしているわけではありませんので、何らかの不具合や故障が含まれる場合があります。また取材から日にちが経過することによる状態変化もあり得ます。掲載情報はあくまでも参考情報であることをご理解いただき、購入に際してはご自身の車両状態チェックとご判断を優先ください。
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  • 購入後の車両の引き渡し・陸送は買い主負担となります。また車両の名義変更費用も買い主負担となります。
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